おわりに
理由はともかく、私たちの周囲から「ホームレス」といわれている人たちを排除することはできなくなりました。それはただ数が増えたからということだけではなく、その人たちの存在を無視することができなくなってきたからです。
2000年に、国は学識経験者等を中心に「社会的援助を必要とする人々に対する社会福祉のありかたに関する検討会」を開催しました。これまで日本の社会福祉というのは、貧困という問題を一つの軸にして作りあげられてきました。この検討会の報告を見ていきますと「心身の障害・不安」(社会的ストレス問題、アルコール依存症)、「社会的排除や摩擦」(路上死、中国残留孤児、外国人の排除や摩擦)、「社会的孤立や孤独」(孤独死、自殺、家庭内の虐待・暴力等)といったこれまでの福祉観では捉えきれない様々な問題が構造的にあらわれており、「ホームレス問題」もその1つとされています。つまりここでは新たな座標軸が必要となり、縦軸を“排除と摩擦”と“社会的孤立や孤独”とし、横軸を“心身の障害・不安”と“貧困”として考えなおそうとするものです。
ホームレス問題は、私たちの生活から避けて通れない問題になってきているのです。非常に大きな社会問題になってきているのだということをお話ししまして、終わりにしたいと思います。
今日の話のキーワードとしまして、私は「人権の尊重」ということを是非挙げておきたいのです。社会福祉の分野におきましても、福祉がさまざまに変化をし、揺れている中で福祉の重要な概念として、「人権の擁護」や「人権の尊重」が特に求められるようになってきております。「人権」という問題は非常に深い意味があります。人権と言ってもホームレスの人権もありますが、一般市民の人権もあるのです。ですから両面から考えなければならないのです。「人権の尊重」ということを、今日の話のキーワードにして終わりにしたいと思います。ご静聴ありがとうございました。