「ホームレス」と市民 
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はじめに


 最近ホームレスという問題が社会の注目を浴びるようになってきました。皆様方もおそらくホームレスについては生活上いろいろなところで出会いがあって、遠目に見たりすることがあるかと思います。大変大勢の方にお集まりいただけたということは、皆様方の関心の高さをうかがい知るということで、ホームレスに関わりのある者として、ホームレスの事情、あるいは名古屋市の状況を正確にお伝えしたいと思っております。


サッカーワールドカップとホームレス


 先日、サッカーワールドカップが日本と韓国で共同開催されました。日本代表はベルギー戦、ロシア戦で世界の強豪を前にして物怖じしない戦いぶりを見せました。その後大阪の長居サッカー競技場でチュニジアと対戦し、見事決勝トーナメント進出を決めました。皆様もサッカーをご家庭のテレビでご覧になられたと思います。私は大学の授業がありましたので、涙をのんで学校に出ていました。我が家は県立大学の教員住宅ですが、日本の試合があるたびに、急遽居酒屋に変身をし、盛り上がっております。
 実はこの長居競技場とホームレスは、ある意味で関係があるのです。皆様方は、このワールドカップの裏にホームレスが関係しているということは、ご存知ないかと思います。説明いたしますと、大阪に長居公園という大きな公園があります。この公園に立派な競技場を作りました。実は私も今年の3月に長居公園に行って参りました。大変立派な競技場ですし、大変広く、サッカーだけではなく、大阪市民の憩いの場になっています。
 しかし、この公園にサッカーの競技場が建設される前まで、500〜600名のホームレスがテントやダンボール、小屋を建てて生活をしていました。大阪市はホームレスの人たちに対して、急遽長居公園のあまり目の届かないところに、ホームレスのための自立支援センターを建設し、そこに入所させました。現在、支援センターには約80名の方が入っていらっしゃいます。この自立支援センターを訪問し、様子を見せていただきました。今は、公園にはホームレスの方は一人もいらっしゃいません。そして無事ワールドカップを終了したのです。このように私たちの市民生活の中に、さまざまな所でホームレスの方たちが生活を始める、このような事態が私の記憶ではおおむね98年頃から目立つようになってきました。
 なぜこのような状況になったのか、皆さんも関心を持たれていると思います。ホームレス問題は98年頃から可視化してきましたが、98年以前はどうだったのでしょうか。このことについて少し触れていきます。その後に名古屋市の聞き取り調査の結果、調査の内容をご報告したいと思っております。

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