現代哲学からのアプローチ・・・「グローバル化する現代と伝統文化」 
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普遍的理念の統制的使用


愛知県立大学公開講座
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 結局、人間にかかわる普遍的価値観が、例えばキリスト教やアングロサクソンというある特定の宗教的な背景、民族的なところから出てきたのではなくて、それが世界に広まるということは、世界の中に何らかの形で、例えば儒教的な思想の中にそういった発想があったと思いますし、自分たちの狭隘なものを克服する要素を概念化する普遍的な理念なのです。現実は、それぞれの不平等、排他主義があり双方の対立があります。しかしこの理念は、現実を批判的な立場から見る、つまり距離をとるわけです。批判をすることは、否定することだけではなく、一定の評価をする時には、事実から一歩離れます。その視点が現代は必要であり、哲学の立場でも最終的には、普遍的な理念を立てることが重要であって、いたずらに現実的な議論をして、それぞれの言い分だけで、相対主義になってしまうことは、避けなければならない。そのような人間の普遍的な価値観を重んずる伝統は、日本の中にもあるのではないかと私は思います。そして民族アイデンティティーといっても、自らの歴史の中に排他的ではない伝統を、改めて掘り起こす作業が必要ではないかと思います。

--- 参考文献 ---
藤原保信        『自由主義の再検討』岩波書店
梶田孝道        『統合と分裂のヨーロッパ』岩波書店
ハンナ・アレント    『人間の条件』筑摩書房
ノルベルト・ボルツ   『意味に飢える社会』東京大学出版会
フランシス・フクヤマ  『「大崩壊」の時代』(上・下)早川書房
              『歴史の終わり』(上・中・下)三笠書房
アンソニー・ギデンズ 『近代とはいかなる時代か?』而立書房
              『再帰的近代化』而立書房 
              『第三の道...効率と公正の新たな同盟』日本経済新聞社
V.E..フランクル     『意味への意志』春秋社
イマヌエル・カント    『永遠平和のために』岩波書店
ハンス・ケルゼン    『デモクラシーの本質と価値』岩波書店
ニクラウス・ルーマン  『信頼...社会的な複雑性の縮減メカニズム』勁草書房
              『自己言及性について』国文社
ジョン・ロールズ    『正義論』紀伊国屋書房
              『公正としての正義』木鐸社
ジョージ・ソロス     『グローバル資本主義の危機』日本経済新聞社

日本の近代化について
大石慎三郎       『江戸時代と近代化』筑摩書房
今井淳也        『日本思想論争史』ぺりかん社
富永健一        『マックス・ヴェーバーとアジアの近代化』講談社
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