親のための子育て経験談集 
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【非行事例1】 叱ることをやめたら非行がなくなった

   小学校2年生の息子は、学校は嫌いではないのですが、勉強が苦手で、宿題もやらずに登校することもあり、忘れ物や提出物の期限を守れないようなことが幾度もありました。母親としても、きちんとさせなければと思い、口やかましく言い、きつく叱ることも度々ありました。息子のしつけのことで、夫婦で喧嘩をすることもありました。
 ある時から、息子がスーパーで万引きをするようになりました。私たちは親として非常にショックを受け、何とかしなければと思い、息子を問い詰め、叱りました。しかし、息子は嘘ばかりついて本当の事を言いません。問い詰められて、問い詰められて、やっと本当の事を言うという状態でした。

 しかし、その後も、何度きつく叱っても、学校で友達の物を盗ったり、家のお金をこっそり持ち出すことなどが続きました。
 夫は、必死になって子どもをしつけなければと考え、子どもを何度かたたきました。私も、一緒になって毎回1時間以上、子どもを叱り続けました。それでも、息子の行動は改善しないばかりか、友達の家で遊んでいて、夜の帰りが少しづつ遅くなっていきました。
 ある日、夫が何度叱っても言うことを聞かないことに腹を立て「出て行け!」と怒鳴りました。すると、息子は出て行ったまま夜遅くなっても家に帰って来ません。心配した私たちは警察に捜索願を出しました。さいわい、その時は知り合いに見つけてもらうことができ、事なきを得ましたが、その後も、何度か家出を繰り返しました。何をしても良くならない息子に二人ともいら立ち、夫婦間でもいさかいが増えて行きました。

 そのうち、しつけのためと思ってたたいて出来たアザを、学校で担任の先生が見つけ、学校から児童相談センターに「虐待」として通報されることとなってしまいました。児童相談所の方から、「しつけとしてであっても、たたくことは虐待である」と言われ、「たたくこと」をやめるように言われました。私たちとしても、子どもが憎くてたたいている訳ではなく、「何とかしなければ」と必死になっているということを、児童相談センターの方にお話したところ、いくつかの助言をもらうことができました。
 ひとつは、「体罰厳禁、叱るのは5分間以内」ということでした。これまで、息子が明らかに嘘と分かる言い訳をするので、本当の事を言うまで叱り続けていましたが、それをやめるようにしなさいということです。他に、「子どもの前で夫婦でいさかいをしないように」「親に甘えたい気持ちを分かってやるように」「『出て行け』とか、本当にされたら困ることは言わない」などのアドバイスがありました。また、私たちが困った時にはいつでも、住んでいる地域の主任児童委員に、相談にのってもらえることになりました。

 夫は、自分の気持ちを隠すことが出来ない人で、腹が立つと顔に出てしまうので、しかるのはもっぱら私がすることにしました。しかる時は、手短かに「5分以内」で行い、これまでのように長々としかることはやめました。
 しかし、児童相談センターのアドバイスに従って「5分以内」を守っているのに、息子の非行は直りません。逆に息子は私たちがしからないのを甘く見て、私たちを試すかのように物を盗む行為を続けました。私は、何度も「こんなやり方で良いのだろうか」と不安になり、主任児童委員の先生に何度も相談をしました。主任児童委員の先生から「大丈夫、もう少し続けましょう」と励ましてもらいながらも、苦しい日が3か月ほど続きました。
 4か月ほどたったある日、ここしばらく息子が何も問題を起こしていないことに気づきました。息子の表情も以前より明るくなった気がしました。それからは、みるみるうちに息子が変わっていく感じでした。

  息子が悪いことをしないので、私たちがしかること自体がほとんどなくなりました。家の中が刺々しい言葉で満ちていた時のことが、ウソのようです。息子も私に甘えてきたり、いろいろな話をしてくれたりするようになりました。夫婦間のいさかいも少なくなり、わたしも穏やかな気持ちですごすことができるようになりました。
 夫は、子どもと付き合うのが苦手ですので、今のところなかなか息子とうまく話ができないようですが、「親が変われば子どもが変わる」という気持ちで、これから3人で、楽しい家庭を作っていきたいと思っています。

<本体験で参考となること>
@ 叱るだけでは、子どもは良くならないこと。叱ることをやめたことで、子どもとの良い親子関係をつくることができ、子どもの行動が変わっていったこと。
A たたくことや、子どもを傷つける言動は「虐待」のひとつであること。
B 困った時には、親だけで悩むのではなく、児童相談センターなどの専門機関に相談をすると良いこと。
C 身近に、いつでも相談できる人を作っておくと良いこと。
 ※ 愛知県では、9か所の児童(・障害者)相談センターが相談を受け付けています。

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