親のための子育て経験談集 
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第2章 問題を克服した事例

【不登校事例1】 友だち関係で不登校になった娘

   A子は中学2年生だった。学校でも目立たない大人しい子としてこれまで何事もなく過ごしてきた。ところが5月の連休過ぎぐらいから頭痛を訴えるようになり学校を休むようになった。心配になった私はA子に「何かあったのか?」と聞くが、A子は何も言わなかった。私はあまりA子を問い詰めても逆効果になると思い、しばらく様子を見守ることにした。
 しかしA子は、朝になると「頭が痛い」、「お腹が痛い」と訴えることが毎日のように変化した。そのようなA子の状態が段々と私も分からなくなってきて不安定になってきた。取りあえず、体調不良もあるのでA子を近くの病院へ連れて行き診てもらった。医師によると内科的には何ら問題はないということだった。
 私は診断書を持って学校へ行き、担任に相談した。学校でのA子の様子については、友だち関係についても何ら変わったことはなかったが、休むようになる2〜3日前から放課になっても机に座ったままでいることがあって、少し気になっていたということだった。私は「友だちと何かあった」と直感して、家へ帰った。そしてA子に再度そのことをそれとなく尋ねてみた。するとA子は、突然大泣きし始めた。そして、堰を切ったようにことの経過を「自分を含めて4人の仲良しがいる。一人(B子)の子は小学校5年生の時にイジメにあったところを助けてくれた子で、中学に入ってからも仲良しだと思っていつも一緒にいた。

 後の2人は2年生になってからの友だちで、B子のお人好しに引かれて仲良くなったのだが、そのB子が自分だけでなく他の2人と仲良くするようになって、自分に声をかけてくれなくなった。学校に行くとまた、『今日も仲間はずれにされるのではないか?』と不安な気持ちになって、そんなところに行く自分が耐えられなくなった。夜、明日は学校に行こうと何回も決心するのだけれど、朝になると身体がおかしくなって思うようにならない」と言った。私はA子の気持ちを知ってから、「頑張って学校へ行きなさい」、「負けてはダメ」、「勉強が遅れるよ」、「B子ともう一度話し合ってみたら」とか色々な想いが浮かんでは消えて、どう対応してよいのか、関わり方がわからなくなった。

 その内にA子が「B子と話し合ってみたいと思うけど、どうしたらいい?」と聞いてくるので、「その考えに賛成だよ」と答えると「私が聞きたいのは、そういうことではなく、B子と話すきっかけをどうやって見つけたらよいか?ということなの」とやや怒りっぽい口調で切り返してきた。私は内心、A子との会話の難しさを想いながら自分に幼児のようにベタベタ甘えてくるA子と反発してくるA子に複雑な想いを感じていた。以前と比べて体調不良を訴えることが少なくなってきたA子は、自分の思うことと行動がともなわない、つまり学校へ行けないフラストレーションを私に向けるようになった。私は、以前の大人しいA子の面影が無くなっていく淋しさと自分に向けてくる苛立ちに母親としての自信が持てなくなり、A子を避けたいと思うようになった。

 私のことを心配した夫はスクールカウンセラーに相談することをすすめた。その後、学校の相談室で私たちはスクールカウンセラーと面会した。そしてことの経過を説明したところ、@友だち関係をきっかけとしてA子が自分自身に目覚めつつあること、A学校を休んでいる間に心理的な成長がみられ、その力が身体的な不調を上回るような状態にあること、BAのことが母親を壁にして、A子自身が自分を変えようとする行動であること、C反発する力とベタベタする行動は、この時期によく観察されること、特に今は家にいることが多いからそれが目立つこと、DB子とのことは、A子の言い分を肯定、否定せずに徹底的に聞くこと、つまりアドバイスよりも気持ちを聞いて受け止めることでA子自身が自分でどうしたら良いのか見つけることができると信じてあげること、E母親が定期的に相談にくること、等の助言を得た。 
 私はA子に対する関わり方のポイントを理解でき、相談して気持ちが軽くなった。その後しばらくしてA子はB子からのメールがきっかけとなり会って自分の想いを思い切って伝えたところB子は「A子の気持ちに気付かなくてゴメンね」と謝ってきた。A子はこれまでの不安が霧散霧消して、程なく登校しはじめた。

<本体験で参考となること>
@ スクールカウンセラーに相談したことで、母親自身のこころの負担が軽くなったこと。
A A子のこころの状態を現在進行形で理解することができ、余裕を持って受け止めることが可能になったこと。
B A子の親離れと依存が同居している状態が思春期の特徴であること。母親自身も不安定にさせられる時期なのでそれを支える父親の役割も重要であること。

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