大阪の新靱（しんうつぼ）にある八百屋（やおや）が舞台となります。
八百屋の主人、仁右衛門には子供が無く、半兵衛という武家の次男坊を養子とし、半兵衛に千代という嫁を取らせます。仁右衛門が亡くなると後妻のくまが家を仕切るようになりますが、くまはねじ曲がった気性で、半兵衛に色目を使い、邪魔になる千代を何度も追い出すようになります。

　4月5日の庚申（こうしん）待ちの宵（よい）、追い出された千代を町役の太郎兵衛が復縁できるようにと千代を連れて帰ってくるところから幕が開きます。
　くまは、愛想良く千代を迎えますが、実は、半兵衛の口から離縁をさせ、嫁いびりの悪評を交わそうと企んでいます。半兵衛の兄十蔵が訪ねて来て、決して離縁せぬようにと半兵衛に誓わせますが、くまにそそのかされ離縁を言い渡してしまいます。

　千代を箒（ほうき）で叩き出そうとするくまを止めたのは、甥の嘉十でした。物乞い（ものごい）をしていたくまを、死んだ仁右衛門が可哀想に思い飯炊き女（めしたきおんな）として連れて来たこと、その恩を忘れ、半兵衛夫妻の邪魔をしていることを暴露します。くまはふてくされ、下着姿で半兵衛夫妻に追い出されたと大声で物乞いをする始末。十蔵は内情を知り、刀を半兵衛に渡し謎をかけ、千代を預かって帰っていきます。しかし半兵衛は、自害を決意します。そこへ千代が戻ってきて、共に死のうと二人で手を取り、心中へと向かいます。