武智光秀は、小田春永の屈辱に耐えかねて本能寺に主君を殺し、中国攻めから戻ってくる真柴久吉の軍に対峙（たいじ）しました。光秀の母皐月は我が子の謀反を心よしとせず、一人尼ヶ崎の閑居にいます。ここへ,旅僧に変装した久吉が駆け込んできます。

　そして、孫の十次郎が初陣の暇乞い(いとまごい）に、また、光秀の妻操は十次郎の許嫁初菊を連れてやってきます。祝言と初陣の祝いを済ませた十次郎は初菊に心を残しながらも出陣します。久吉を追ってこの閑居の竹藪より現れた光秀は、久吉だと思い槍を障子に突っ込みます。しかし、刺したのは、久吉ではなく我が母でありました。

　残念至極と驚く光秀、刺されても我が子を諌める気丈な皐月、操とともに嘆き悲しみます。やがて、瀕死の手傷を負っ十次郎が戦場より引き返し、味方の敗北を知らせます。進退窮まった光秀の前に久吉と、その部下加藤正清が現われ、天王山での再会を約して幕となります。